ぼくのヒーローR2

リビングに戻ると、スザクの膝の上に座るルルーシュをナナリーが抱きしめ、ルルーシュもまたナナリーを抱きしめていた。そんな二人を、スザクが守るように抱きしめ、こちらを確認するようチラリと視線を向けてきた。
毛布から顔を出しているルルーシュは目元は赤いが、泣いてはいない。
幼いながらも兄の顔になっており、ナナリーを慰め不安を取り払おうとしている。
さすが、シスコンルルーシュ。
ナナリーのためなら、兄の意地で即座に立ち直るか。
まあ、スザクがいることも大きいのだろうが。

再びC.C.はスザクの隣に座り、ユーフェミアもまたソファーに腰掛けた。
ミレイはダールトンと咲世子の様子を見に玄関ホールへ向かったため今はいない。
立ち直りつつあるヴィ家兄妹とは逆に、ユーフェミアの表情は暗く落ち込んでおり、ショックが隠せないようだった。
今までの自分の優しさがどれほど周りに迷惑をかけ、どれほど周りを傷つけてきたのか、あの後もユーフェミアが理解するまで二人でさんざん説明をした。
スザクを専任騎士として選んだ事も当然その中に含まれている。
スザクに対して生か死かの選択をさせたことを理解させるため、遠まわしに言っても無駄だからと、包み隠さず教えた。
スザクが生きるためには専任騎士になるしか道はなかったのだと知ったユーフェミアは、ようやく自分の、皇女の言葉の重さに気づき、ショックのあまり震えていた。
当然か。
ユーフェミアがスザクを選んだのは能力が秀でていたからだけではない。
スザクに好意を抱いていたからこその選択だ。
拒否も拒絶もされたことの無いユーフェミアは、この申し出を断られる未来など想像もしていなかったし、何よりスザクは騎士となる事を喜んでくれていると思っていた。
生死を問われ、生きるために騎士を選んだなんて、教えられなければ一生気付かなかっただろう。
相手の気持を無視した優しさは善意の押し付けでしか無く、相手を傷つけ苦しめる悪意になってしまう可能性をどうにか理解したことで、少しはルルーシュ達の目指すユーフェミア皇帝には近づけただろうか。

この礼として、ピザ10枚は貰わなければな。
もちろんLで。
ようやく話し合いの場ができたんだ、安いものだろう？と考えたのだが・・・甘かった。

「ルルーシュ、事情は全て聞きました。突然子供に戻ってしまったこと、他にも同じく子供に戻ってしまった人たちのことも聞いています。大丈夫です、安心してください。エリア11だけではなく、本国の医師にも協力をお願いして、必ず元に戻してみせます！」
「おいこらバカ皇女。私たちがさっき説明したことをもう忘れたのか」

あまりの内容に、C.C.は即ツッコミを入れた。

「忘れてなどおりません」

馬鹿と言われたのが気に入らないらしく、不愉快げにユーフェミアは眉を寄せた。
だが、スザク、ナナリー、そしてルルーシュも、本気なのか？冗談じゃない。という表情で見つめてきたため、ユーフェミアは、また自分の発言が間違っているのだと気づき、口をとざした。

「いいか、ルルーシュとナナリーは死んでいるんだ。そこをまず忘れるな。異常な若返りを研究するため、当然遺伝子検査をする事になり、そこから皇族に縁があると知られることになる。さらには、死を偽装し偽りの名を名乗るルルーシュの情報は、どこの病院にも残されていない。産まれる前から今までの間、一度も病院の世話にならないなど、普通に考えればありえない話だな？だが、何処を探しても出征のデータすら存在しない人物に疑問を抱かない者はいない。そこからこの二人の生存が知られるとは思わないのか？」
「・・・あっ！」
「「「・・・」」」

思っていなかったらしい。
みな呆れたようにユーフェミアを見ると、頬を染め、恥ずかしそうに身を縮めた。
・・・まあ、反省したということは先程よりは成長したということか。

「で、ではどうすれば・・・」
「それは、こちらで　てをうっている。ゆふぃは　なにもしなくていい」

兄の顔で、異母妹にルルーシュは言った。
頼むから、何もしないでくれ。
そんな声が聞こえた気がした。

「そ、そうですか。でもルルーシュ、黒の騎士団の設備ではちゃんとした検査もできないのではありませんか」

ユーフェミアの発言に、全員が動きを止め、驚きの眼差しを向けた。

「ゆふぃ、なぜ　くろのきしだんが　でてくるんだ？」

おそるおそる、ルルーシュが尋ねた。

「あら？だってゼロはルルーシュでしょう？」

ユーフェミアは小首を傾げながら言った。
確かに、ゼロの正体はルルーシュだ。
だが、どうしてそれをユーフェミアが？
ルルーシュとC.C.は即スザクを見たが、スザクの表情は、何で知っているの！？というものだったし、二人の視線に気づき、ブンブンと首を振った。

「お兄様が・・・ゼロ？」

ナナリーが驚き、つぶやいた。

「ルルちゃんが、ゼロ？」

もう一つの、驚きの声。
それは、玄関ホールにいたはずのミレイだった。

本編ユフィは人前でゼロの正体を明かすはずはないし、専任騎士や、戦闘中に行われた告白とかはともかく、相手のこともちゃんと考えていると思います。
この話のユフィは、周りを見ないから空気も読めず、我が強くて独善、さらには口が軽いという設定。

カルテの保存期間は5年ほどなので、通院歴が一切残って無くてもおかしくないのかもしれないけど、この世界では全てデータで保存されて保存期間という物がなく、データは抹消される事がない為、記録が一つも無いのはおかしい。という事にしてください。
あと、ルルーシュは熱を出しても病院には行かず、ナナリーは記録が残らない形でアッシュフォードの息がかかった病院へ・・・というご都合主義展開でお願いします。